【連載|対談】ezorockers RIKIYA YAMAJO~雨が降ってるみたいにじわりじわりと影響を受けている

ezorockの『人』に着目したコラム第30回目は、大雪山国立公園旭岳自然保護プロジェクトの創世記に活動したじょーです。ezorock20年を振り返る特別企画の第八弾として、活動中のターニングポイントと自身の変化について聞きました。長年、一緒に活動してきたななことの対談です。

PICK UP

✔ 「山行かない?」って言われて
✔ 自然を守るというよりは未来に残す
✔ イメージが自分の中で具現化された活動だった
✔ 山のことなんか一ミリも分かっていない人間を引き込めたのは嬉しかった

PROFILE

名前:山條力矢(やまじょうりきや)
あだ名:じょー
所属:行政職員
ezo所属:大雪山国立公園旭岳自然保護プロジェクト
出身地:北海道札幌市
特徴:20年前は9歳。サッカークラブでサッカーしてた

名前:高橋苗七子(たかはしななこ)
あだ名:ななこ
所属:社会人(NPO法人ezorock理事)
出身地:北海道旭川市
特徴:20年前は13歳。バレー部にはいった

「山行かない?」って言われて

:じょーがezorockで活動していたのは、旭岳*の活動だよね。あと、最初はふくしまキッズ*か。
:一番最初は、2012年のふくしまキッズの活動でezorockと出会った。
:で、ふくしまキッズの活動の後で私がじょーに電話して。
:「山行かない?友達誘ってもいいよ!」って言われて行ったのが最初。
:当時は、旭岳の活動が始まったばかりの時だったから、じょーと私ともうひとりくらいみたいなメンバーだったよね(笑)それから、ちょっとずつそれぞれの後輩とかが増えていった。だんだん一人増え、一人増えみたいなね。酪農学園大学と東海大学札幌キャンパスの生物に興味あるメンバーたちが中心に結構集まってたという印象がある。

*旭岳:大雪山国立公園旭岳自然保護プロジェクトのこと。NPO法人大雪山自然学校に所属する旭岳自然保護監視員をカウンターパートナーとして2012年から活動している。
*ふくしまキッズ:福島第一原発の事故問題を受け、全国各地で展開された福島の子どもたちを受け入れるキャンプ。北海道は2011年~2015年まで実施され、ezorockでは北海道の事務局として道内各地へのボランティア派遣・コーディネートを担った。

自然を守るというよりは未来に残す

:活動中に、今でも思い出すような名言みたいな覚えてることはありますか?
:一番最初に旭岳に行った時に、ボランティアの受け入れを中心にしてくださった現地スタッフの方とのやり取りは覚えているかも。現地スタッフやボランティアとの話で、自然を守るというよりは未来に残すっていう、行為としては一緒なのかもしれないけど、そんな意識改革はされたかな。
:具体的には?
:具体的には、綺麗なものを「守る」っていうと上から目線になっちゃうから、共に生きて未来にいいものを残していきましょうと。素晴らしいものを子ども達に残していきましょうというような考えにはなったのかな。それがその後の活動に具体的にどう影響してるかって言われたらちょっと分かんないけど。
:うん、確かに言ってたね。ボランティア募集とかチームの名前を決めるときとかの言葉選びで「守る」は使いたくないって。
:そうそう。報告会のときも自然保護してますっていう話はしないで、山に行って楽しい活動しますみたいなとこから、綺麗な場所なので一緒に残す活動しませんか?みたいな切り口で伝えてはいたかな。
:確かに。自分達が自然に対して、守ってあげようと思うのはおこがましいというか。私たちは、自然を使わせてもらってるんだから、それをずっと楽しめるように残していこうっていう。
:そうそうそう。それが初っ端であったかなと思う。あとはなんだろうな。一緒に試行錯誤しながらやっていってた感があるから、これで変わりました!刺さりました!っていうのがパッと思い浮かばないんだよね。話してたら出てくるかもしれないけど。

イメージが自分の中で具現化された活動だった

:それこそプロジェクトの名前を決めているのがその頃だったし、山に監視員という人たちがいて、思いを持ってこういう活動をしていて、そこに都市部から自分達が行くことで何が生まれるのか、そもそも監視員ってどういう存在なんだっていうところから探り探りやってる時期だよね。
:そもそもこの監視員の人たちは外部からの助けが必要ないような状態で、わざわざ素人のボランティアで何か助けになることがあるのかっていうところから探っていってたからね。ターニングポイントっていうよりは、そういう思いを抱えながらやってた時に、受け入れを中心にやってくださってた大雪山自然学校の方から「こっちも色々成長ができてありがたい」って言ってくださった時は、ターニングポイントではないけど、嬉しかったなっていう記憶。
:こっちが行かせてもらったりしてるだけじゃなくて、何か向こうにもいいことがあったって思えた時が嬉しかったんだ。具体的に何が変わったって言われたんだっけ?
:ボランティアを受け入れるような能力が付いたって言ってなかったかな。
:ボランティアが来たら作業の意味とか背景とか自然のことも説明しなきゃいけないから。言語化して説明する機会がそれまでなかったから良かったっていうことは言ってた。
:単純に、石を運んだりの重労働でも助かったって言ってた。

:人手がいるからね。近くの沢まで降りてって、30キロくらいの石を背負って戻ってを繰り返すとかやってたよね。登りやすさだけじゃなくて崩れにくさも気にしてたよね。私も「自然保護とは」「なぜ必要なのか」、単に外で遊ぶのが好きとかだけじゃない部分、根拠をこのプロジェクトで学んだな。じょーが書いたezorockのコラムも今でも読むけどいい記事だよね。(コラムはこちら)
:あー、書いたかも。懐かしいっすね。大学で勉強してて同じ学部の人でも、自然保護の勉強はしたけど現場は全く知らない人とかいたから、そういう人たちよりはより深く勉強させてもらったかな。
:確かに当時言ってたかも。「机では勉強できるけど、リアルな現場は全員行けるわけじゃない」って。勉強としていい機会だったって。
:ぼんやりと自然は守らなきゃいけないみたいなイメージが自分の中で具現化された活動ではあったよね。
:一回行ってすとんと落ちるわけじゃなくて、何回も行くから落ちる感じかな。

山のことなんか一ミリも分かっていない人間を引き込めたのは嬉しかった

:他に何か思い出すことはある?
:言葉としてじゃなくて出来事としてすごい嬉しかったのは、ピングー(じょーの大学の後輩で、旭岳の活動に参加していたメンバー)がコアスタッフになってくれたのがすごい嬉しかったかな。彼は農家のせがれでさ、農業の勉強をしに大学に来ていて、山のことなんか一ミリも分かっていない人間を、引き込めたのはすごく嬉しかったね。
:最初は嫌々というかね、誘われたから行かなきゃって来てたよね(笑)
:先輩からの圧に耐えられなくてね(笑)気がついたら2回目も来て、「コアスタッフやってみない?」って言ったら「やります!」って。
:ピングーなりに、このまま学生時代終わるよりはという気持ちもあったみたいだよね。
:現地スタッフの方も言ってたかも。一回だけなのかなって思ってたけど、また来た!みたいな。ずっと来てくれて嬉しいみたいな。だんだん装備とかが山っぽくなっていくのが嬉しかったって。
:帽子買ってみたりリュック買ってみたりね。それこそコラムにあったことじゃないけど、「ファンを増やした」みたいな感じだよね。それは嬉しかった。

自分の中の土壌には至るところにezorockとか大雪山の成分がある

:活動の思い出は出てくるんだけど、印象的な名言と言われると難しいよね。ぐさっときた言葉はなかったんだろうな(笑)でも、影響は確実に受けてるはずで、自分でも実感してる。ピンポイントでぐさっていうイメージではなくて。雨が降ってるみたいに、全体的にまばらにじわりじわりと影響を受けてるような感じなんだろうなって。
:人生に染み入ってる感じね。
:そう。自分の中の土壌には確実に、至るところにezorockとか大雪山の成分はあるんだけど、それの抽出はできてないな。
:私のイメージで思ったのは、RSRみたいな年一の大きい企画に向かって、ある意味しんどい思いをしながら壁にガンガンぶつかりながら活動するチームに比べて、旭岳は好きから派生して、その先に活動があって。自然と山に行ってるような感じだから、壁にぶつかってた時にこれを言われてハッとなったというより、楽しそうな印象が強いんだよね。
:壁にどーんっていうよりは、試行錯誤しながら山に登ってる感じだよね。
:そうそう、試行錯誤はすごいしてて「なんでやってるんだろう」みたいなことはいっぱい考えてたよね。自然保護って時間的にも長い問題だからすぐ答えは出ないじゃん。それだけみんな悶々としながら、でも楽しんでやってて。

おまけ~好きな部分がマニアックになってく

:旭岳チームの面白いところはさ、山に対して「今日はかわいいね、美人だね」とか、高山植物も「今日はかわいいね」みたいに擬人化されて言うんだよね(笑)
:言ってたね。擬人化するようになると終わりだみたいな(笑)
:最初は山登ったりしてしんどいけど、だんだんきゅんとするようになっちゃうんだよね。「元気かなー?」とか「どうしてるかなー?行かなきゃ!」って。あれ不思議だよね。
:毎回毎回景色が違うから飽きないんですよね。あれ、ずるいよな(笑)で、みんなだんだん好きな部分がマニアックになってくんだよね。最初は単に「花綺麗」から、「チングルマ綺麗」だったのが、「俺ここのチングルマが好き!」って、だんだんマニアックになっていくんだよね(笑)
:なんなら、自分が作った階段とかね。この階段!みたいな(笑) 「ここは私が作った」とかどんどん自分ごとになってくんだよね、山は。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
今後も、ezorock20年を振り返る特別企画を続々連載していきます。

次回も楽しみにお待ち下さい。
そして、ぜひ活動にも参加してみて下さい!
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