【連載|対談】いぶり自然学校・上田融さん~自分を変えようとする瞬間に立ち会える~

ezorockの『人』に着目したコラム、今回は特別版です。ezorockでは他の団体と連携して活動することがほとんどのため、現場でしか出会えない連携先のスタッフが多いという特徴があります。そのため、今回はそのスタッフさんの声を直接みなさんにご紹介します!

今回は、苫小牧にあるNPO法人いぶり自然学校の代表、上田さんです。上田さんから見たezorockって?どんな学生だったの?という素朴な質問にも丁寧に答えてくれました。

PICK UP

✔ 丁寧にボランティアを送り出してくれる団体だと思ってた
✔ 僕らが子ども側に行かなきゃいけない。だから、子どもの育ちにはボランティアが必要
✔ 自分で自分を変えようとしてる場面はたくさんあった
✔ 個人的にやってる仕事やミッションが先に繋がったっていうのはうれしい
✔ すべての人が森に行くことが普通になればいい

 

PROFILE

名前:上田融(うえだとおる)
あだ名:うえだんな
所属:いぶり自然学校
出身地:岐阜県岐阜市
特徴:ゴールデンカムイを全巻揃えている

名前:高橋苗七子(たかはしななこ)
あだ名:ななこ
所属:ezorock
出身地:北海道旭川市
特徴:ブラックジャックを全巻揃えている

丁寧にボランティアをケアしてる団体だなって

な:最初にezorockと一緒にやろうと思ったのは、何でですか?
う:最初って、NPO法人ねおすのときかな?ミッションを同じにしてやるっつーのはやっぱり「ふくしまキッズ」だったんだろうな。
な:2010年とかですかね?
う:それまでは、ezorockっていう団体があるっていうのは知ってたけど、そんなに簡単に声かけられないよなって。で、「子ども農山漁村交流プロジェクト」で連携した時に、ezorockってあんなに人動かせるんだなって思ったし、各地にいろいろ人が来てたけど、よこしまな考えの人がいなかったのね。それで、これはezorockがすごい面倒見てんだなぁって思ったんだよね。そうこうしているうちに震災がおきて、「ふくしまキッズ」を長いことやって。

う:あれはミッションだけがあって、儲かるとかってものじゃないでしょ。なのに、草野君は「やると決めたことですから」って言ってくれて。あんだけ丁寧にボランティアさん送り出してくれる団体が本気になってくれているわけだから、いつかお返しができたらいいなって思ったんだ。で、準備ができたのでお願いして今に至るっていうのかな。なんせ、こうやってみててもわかるように、苫小牧の学生さんがいないんだよ。札幌から来てもらうしかない。Door-to-doorで片道2時間かかる時間が申し訳ないっていう気持ちは強かったんだけど。
な:でも、ボランティアからすると、体験の場が少ないんです。学校行って、バイト行って、サークル行って、飲み会行って、それだけで4年間終わっていく人もたくさんいる。だからこそ、この特殊な場で得るものはあると思います。だからみんな来るし。
う:まあ、そうはいっても、たかだか数時間だし、目の前に子どもはいるし、彼らにわかりやすく渡せる情報ってすごく少ないんだよね。深い場面だったり、ロジカルなことはあるんだけど。

 

ふわふわしている子どもの側に入っていく

う:ezorockの子たちに伝えてるのは、学校や幼稚園じゃない時間ですよってこと。だから一斉になんかさせるつもりはないよって。3・4・5歳は特に、運動機能…俊敏性とかバランスとか、そいういうのを本能的に高めたくてしょうがない、高いところに登りたくてふわふわしたくてしようがない生き物だから。だから僕らが子ども側に行かなきゃいけない。子どものふわふわした状態をどんだけ促進できるかが仕事であり、側にいてどんだけ一緒に動いて、喋って来られるかっていうのが仕事だっていうこと。俺らは、いつも子ども一人一人のことに集中できるわけじゃない。だから結論としては、子どもの育ちには学生さんが必要なんですよ。そういう人がいれば、子どもは間違いなく救われる。

 

内発的に変わろうとするしかない

な:見ていて変わった人はいましたか?
う:正直あんまり変わったとは思わないんだよな。でも、自分で自分を変えようとしたっていう場面はたくさんあったよね。例えば教育大入って、学校の教員くらいしか見えるものがなかった人が、こんな仕事や世界もあるっていうことを知って、自分でチャレンジしてみようって決断して歩き出してるとか。本質的なところが変わっているのかはわからないけど、自分が自分を変えようとした瞬間を見れたのは面白かったよね。そんな、俺らが変えられたりするわけじゃなくて、内発的に自分が変わろうとするしかないよね。

 

お母さんたちがezorockを知ったっていうのが大きい

な:いぶりで変化はありましたか?
う:よかったと思うのは、こっちで活動に携わっているお母さんたちが、ezorockっていう、あくまでボランティアでやっている団体があるってことを知るようになったっていうのは大きかったと思う。だから、母さんたちも学生がきたら、「なんかしてあげなきゃ」って思う。逆に「あなた全然ダメだったわ」って率直に言うときもある。それはステージがあがったってことなんだよね。僕が持ってきたネットワークをお母さんたちが使えるようになってきたっていうのはすげーよかった。それに、僕らの活動がきっかけになって地域おこし協力隊制度とかを使って各地に入ろうとしている人もいるわけじゃん。個人的にやっている仕事やミッションが先に繋がったっていうのはうれしいよね。

中道を行く!

な:いぶり自然学校の特徴って何だと思いますか?
う:「中道を狙う」っていうことかな。とんがらない。本当に僕がやるべきことは、「森の幼稚園」じゃなくて、「幼稚園の森」を作ることだと思ってるのね。北海道の幼稚園はたいていバス持ってるんだからさ、週に一回くらい自分のところの森に行けばいいじゃん。中道を走るっていうのは、そういう意味。すべての人が森に行くことが普通になればいいっていうか。
な:ezorockも、一人のリーダーを作るよりも、百人の一歩を押すっていうことを目指してるっていうか。とがってない。それはすごく手間がかかることだけど。

う:まぁ、自分にとんがる技量がないとも思ってる。アイスホッケーだって20代の頃面白くってさ、いいところまで行けるんじゃないかと錯覚したこともあるけどさ。でも今やってるのはスティック拾い集めて、工作するっていうね(笑)
な:中道っていうか、「誰もやってないこと」ですね。
う:そんなの気が付かなかったわっていうのと、そんなことできるんだってうことと。あ、これならできるかもって。今まで捨ててたものをこんな風にできるんだって。あなたの足元にいろいろあるじゃんっていうね。
な:逆に中道でいい、それでいい、っていうのを言ってくれる大人ってあんまりいないですよね。
う:うん。でもそれに気づけたのは、苫小牧っていう街のおかげだよね。この煙突から煙がもくもく出ているところで、わざわざ遠くまで行かなくてもプレシャスな体験ができるっていうのは、やっぱり僕らの技術のみせどころだと思うし。

 

子どものキャンプが仕事になるっていう驚き

な:上田さんは学生時代、何をしてたんですか?
う:モスバーガーでバイト。たぶん、まだ作れると思う。しかも結構上手に。特に大きな志もなく東京の大学に行って、1年生のときは…何してたのかなぁ。勉強はいうほどしてない。あまり面白い奴いなかったんだよな。そこに埋没しなくてよかったなって思ってはいる。2年生になるときに、子どものキャンプのリーダーっていうのがあるからって誘われて、それがきっかけだった。そんな外で子どもを遊ばせることが仕事になるなんて思ってなかったからすごいショックだったけどね。で、そこからのめり込んで。最初は子どもの前でなんかやってるっていう自分に酔いしれてた。でもそれが教育の一つの手法だっていうのは、後から知ったんだよね。その後は子どものキャンプ中心の大学生活を送り、知り合いもそっち側の方が多かったかな。大学の友達より、ミッションが同じところにいる人は刺激的だった。

おまけ~北海道とのファーストコンタクト

う:キャンプの仕事で食っていこうって思ってたんだけど。親のお金で大学行かしてもらっていた手前、教員の採用試験受けないまま終わるのもどうかなって思ってて。で、キャンプと重ならない試験を受けられるのが北海道だけだった。
な:(笑)
う:だから北海道。本当だよ。
な:衝撃の事実。
う:補欠合格だったんだけどね。実は、キャンプを主催していた会社のスタッフさんが、俺を雇えないかって動いてくれたんだけど、結局4年生の2月にダメだってわかって。困ったなって思ってるときに、団体の偉い人が、これからもキャンプとか自然体験みたいなことしていきたいんだったら、一回教育の本道に入ってみろって、それで3年・5年後に考え直してみて、まだこっちが魅力的だったら戻ってきたらいいんじゃないかって、言われて。ああ、そうだなって思って。それは予言としては正解だったと思うよ。で、道から教員の欠員補充採用の話がきて、フォーシーズンの寝袋とスーツだけ持ってきた。それが北海道とのファーストコンタクト。
な:今明かされる真実ですね。
う:そんなわけなんでね、ねおすでボランティアしてたんだ。で、たまたま札幌事務所に顔出したときに、「登別でやる事業に全然人が足りてない。教員みたいな人が欲しいんだ」って言われてさ。「あ、俺やりたいです」。それで、登別市に入って。そこで社会教育主事の資格を取りなおし…っていう感じ。その4年後、「もう(期間が)終了だけどどうすんのよ」って。教員に戻るか、北海道の社会教育主事としてやっていくか、自然学校かみたいな。で自然学校を選んじゃったの。
な:えー、クレイジー。
う:(笑)。ちょうど小泉政権の時で、小さな政府みたいな。そうすると社会教育なんか絶対切られるんだよ。だって、今指定管理者制度っていうのあるでしょ、それが出てきた時期で、ネイパル洞爺もなくなったり、スポーツクラブとかたくさんできてきた時期で。役所がわざわざ作ったりする必要ないじゃん、でもコストカットしたからといって、質を下げるわけにいかないから委託することになる。それを、やればいいって。それに妙に納得して。でも、自分でやるとはまさか思わなかったよ。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
今後もezorockで活動するコアスタッフ達を紹介していきます。

次回も楽しみにお待ち下さい。
そして、ぜひ活動にも参加してみて下さい!

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